東京高等裁判所 昭和26年(う)5353号 判決
被告人 林鐘変
〔抄 録〕
論旨第四点について。
外国人登録令第十条第一項が、外国人は常に登録証明書を携帯し、外務大臣の定める官公吏の請求があるときは、これを呈示しなければならないと規定しているのは、同令第一条の規定するように外国人の入国に関する措置を適切に実施し、且つ、外国人に対する諸般の取扱の適正を期することを目的とするものであることは所論の通りであるが、同令第十条第一項に常に登録証明書を携帯しとあるのを、単に所論のように外国人が入国居住の合法的であることを公に証明されることにより、種々の権利保護と利益を受ける場合にのみ、登録証明書を携帯すれば足るものと解すべき理由は見出し難いし、又これを一瞬たりとも携帯していなければならないことを要求しているものということもできないが、広狹いづれに解するにしても同令第一条所定の目的竝びに同令第十条第一項の全文から考えて、すくなくとも外務大臣の定める官公吏の請求があるときは、登録証明書を呈示することができるよう常に携帯しなければならないものであることは法文上明らかであるところ、原判決の認定した判示第二の事実は、被告人は朝鮮人であつて常に登録証明書を携帯しなければならないのにかかわらず、昭和二十六年三月十八日午前三時頃東京都大田区北千束町四百八十二番地大田区立赤松尋常小学校東南隅便所内の窃盗現場において外国人登録証明書を携帯しなかつたというにあつて、原判決引用の証拠に依れば、被告人は右現場において逮捕された際外務大臣の定める公吏である警視庁巡査佐古井邦男から外国人登録証明書の呈示を求められたが、これを所持していなかつたことが認められるのである。しからば被告人は外国人登録令第十条第一項に依り常に外国人登録証明書を携帯していなければならないにかかわらず、前記日時場所において携帯しなかつたものといわねばならないから、被告人の右の不携帯を同令第十条第一項違反罪に問擬した原判決は相当であり、原判決には所論のような法令適用の誤りはなく論旨は理由がない。